豹頭の戦士であるグインを主人公として、架空の世界、架空の時代に生きる、彼を中心とするさまざまな人物の生と死の波乱を描いた大河小説。『三国志』を彷彿とさせるような、国と国とのあいだで繰り広げられる戦争、策謀、興亡の歴史を背景として、その宮廷、あるいは市井に生きるさまざまな人物の野望、妄執、友情、決別、恋愛といった愛憎が織りなす壮大な人間模様を紡ぎだしていく。1979年9月の第1巻『豹頭の仮面』の刊行以来、コンスタントに巻数を重ね、100巻を越えてなお多くの読者を獲得しているベストセラー小説シリーズである。
シリーズ開幕当初から正伝のみで全100巻という構想が明かされており、2005年4月には第100巻となる『豹頭王の試練』が刊行された。もっとも、100巻で構想通りには物語は完結せず、それどころか、完結に至るまでにはまだ多くの展開が残されていることは確実で、どこまで続くかは作者自身にも予想がついていないという。2009年2月現在、正伝が125巻、外伝が21巻(上下巻1編を含むため22冊)発売されている。正伝125巻発行時点での発行部数は累計3000万部以上。
発表形態としては、ハヤカワ文庫から書き下ろしで発売される(第1巻『豹頭の仮面』および外伝の一部は、先行して雑誌(主に『S-Fマガジン』)や関連書籍に掲載された)。表紙、口絵、本文イラストは加藤直之(正伝1~19巻、外伝1~5巻)、天野喜孝(正伝20~56巻、外伝6~9巻)、末弥純(正伝57~87巻、外伝10~16巻)、丹野忍(正伝88~、外伝17~)が手がけている。
2003年には、米Vertical社より英語版の発売が開始された。続いて、2005年にはBlanvalet Taschenbuchverl社よりドイツ語版、Editrice Nord社よりイタリア語版、БИТВА В НОСФЕРУСЕ社よりロシア語版が、さらに2006年にはFleuve Noir社よりフランス語版の出版が開始された。中国語版、韓国語版の出版も予定されている。
また、2000年には柳澤一明の作画により、外伝『七人の魔道師』の漫画化が開始された。作品はメディアファクトリー発行のコミックフラッパー誌に2003年まで連載後、単行本化された。2006年9月にジャイブ社から出版された『栗本薫 THE COMIC グイン・サーガ』には沢田一の作画によって漫画化された正伝の一部が収録されており、2007年1月にはそれに新たに書き下ろしを加えたものが、ジャイブ社から『グイン・サーガ1』として出版された。なお、同社刊の漫画雑誌『月刊コミックラッシュ』2008年4月号より新章の連載が開始されている。
著名な日本のファンタジー小説であるにもかかわらず、刊行開始以来30年弱にわたり映像化されなかった。しかし2008年8月、2009年春からテレビアニメ化されることが発表された。[1]
単一の作家による小説としては、すでに世界最長の作品となっていると考えられるが(複数の作家による世界最長の作品としては『宇宙英雄ペリー・ローダン』がある)、現在のところ、ひとりの作家の書いた世界最長の小説としての記録は「ギネスブック」には掲載されていない。
あらすじ
首都クリスタルへのモンゴール軍の奇襲により、中原の歴史ある国パロは滅亡の危機に瀕していた。国王、王妃までもがモンゴール兵の手により殺害されるという状況の中、パロ王家に太古より伝わる古代機械(物質転送装置)を用いて、国王の長男にして王太子であるレムスと、その双子の姉リンダを友邦国アルゴスに逃がそうとしていた。が、古代機械の座標設定に狂いが生じ、二人はあろうことか敵勢力のまっただ中、モンゴールの辺境たる、魑魅魍魎の跋扈するルードの森へと転送されてしまった。
身を守るすべとてなく、ただ怯えて身を隠すしかなかった彼らを、ついにモンゴール軍の小隊が発見し、絶体絶命の危機に追いつめる。しかしその時、彼らの前に豹頭人身の異形の超戦士が突如として現れ、単身で小隊を全滅させ、レムスとリンダを救う。「グイン」という自分自身の名と「アウラ」「ランドック」という言葉を除き、全ての記憶を失っていた彼は、戦いの後で憔悴し切って倒れるが、リンダの介護によって間もなく体力を取り戻し、以後二人と行動をともにすることとなる。
死霊を始めとする魑魅魍魎の襲撃から、一夜の間は辛くも逃れた彼らだったが、翌朝には一帯を支配するモンゴールの出城・スタフォロス城の軍勢に再び発見され、衆寡敵せず投降を余儀なくされる。全身を業病に冒された「黒伯爵」こと城主ヴァーノン伯爵により投獄されたグインらは、隣の牢に収監されていた若き傭兵イシュトヴァーンと出逢う。その夜、半獣半人の蛮族セム族がスタフォロス城に攻め入った混乱に乗じ、獄中でリンダと知り合ったセム族の娘スニを加えた四人は、スタフォロス城から眼下に流れる暗黒の河・ケス河へと身を投じて脱出に成功する。そして翌朝、彼らより先に脱出に成功していたイシュトヴァーンが一行に加わり、ケス河の対岸、妖しい瘴気渦巻く砂漠の地ノスフェラスを最初の舞台として、レムスとリンダの苦難に満ちたパロへの帰還の旅が始まるのである。(以上、第2巻『荒野の戦士』冒頭部まで)
世界観(地理)
物語の舞台となるのは、地球に酷似した惑星上にあるキレノア大陸を中心とした地域である。人種、生物相、気候など、ほとんどが地球と共通しているが、ノスフェラスと呼ばれる地域(後述)に代表されるように、地球上には見られない人種や生物も相当数存在している。
以下、代表的な地域と国について述べる。
中原
キレノア大陸の西端近くにある、比較的温暖な気候で知られる地域。物語の大部分は、この地域を舞台として展開している。地域の北をケイロニア、東をゴーラ、南をパロという大国がそれぞれ支配しており、これらは世界の文明・文化の一大中心地として発展を遂げている。それぞれの国の境には、国同士の絶え間ない衝突を避けるための緩衝地帯として、自由国境地帯と呼ばれる、どこの国にも属さない地域が存在している。
諸国の気風を現す俗語として「モンゴールの弁舌、ユラニアの冒険心、クムの忠誠、パロの謙遜」というものがある。これらを見出すことは非常に難しい、という皮肉である。
パロ
特徴
三千年前に建国された、中原で最も古い王国であり、華美にして優雅な文化を特徴とする国。首都はクリスタル。
最先端の科学、教育、芸術といった、あらゆる文化の発信地であり、この世界の中にあっては極めて進んだ文明を誇っている。一方で、「得体の知れない」あるいは「時代遅れのもの」として多くの国々から忌避されがちな魔道(後述)を、中原で最も重んじている国でもある。特に王家は神から授かった魔道の力を受け継ぐものとして崇められ、その力を守るために、その後継者の婚姻に際しては「青い血の掟」と呼ばれる純血の掟に従うことが求められている。事実、王家には優れた魔道師や予言者が度々出現しており、王家を中心とする魔道の力が武力的に脆弱なこの国を長らえさせてきた原動力ともなっている。
また、首都クリスタルの王宮の地下には、「古代機械」と呼ばれる、失われた超文明の遺産とも云うべき謎の物質転送機械があり、それがこの国に野心を抱く様々な勢力の関心を惹きつけ、この国を何度か滅亡の危機に陥らせることにもなっている。
本編中の歴史
モンゴールによる首都クリスタルへの奇襲によって勃発した黒竜戦役により、パロは国王と王妃を殺害された上に首都を占領され、一時的にモンゴールの支配下に置かれた。が、王族のひとりであるクリスタル公アルド・ナリスを中心とする反乱が成功し、モンゴール軍は撤退、パロは主権を回復する。
その後、前王の長男である王太子レムスが即位し、ナリスを摂政宰相として統治を開始するが、未だ年若で未熟な王と、国家解放の英雄である宰相との間で次第に確執が生じ、国内は国王派と宰相派とに二分されていく。やがて、宰相を支持する市民から沸き起こったレムス廃位・ナリス即位を求める声をきっかけとして、一部国王派の暴走が起こり、拷問によって重傷を負い、手足の自由を失ったナリスは宰相を退き、自領の地方都市マルガで隠遁生活を送ることとなる。
だが、キタイの謎めいた魔道竜王ヤンダル・ゾッグの強力な魔道により、レムスがキタイの傀儡と化していることを知ったナリスは、パロを守るために反乱を決意、マルガを中心とする神聖パロ王国の独立を宣言した。これによって生じたパロ内乱は、キタイ、ケイロニア、ゴーラ各軍までもが参戦する大きな戦となり、パロの国力は急速に疲弊していく。
戦いの半ばにしてナリスは死亡し、神聖パロ王国は消滅するが、その遺志を受けたケイロニア王グインの活躍により首都クリスタルは陥落、キタイ勢力も一掃され、パロは平和を回復した。レムスは廃位となり、替わってレムスの姉でナリスの妻となっていたリンダが聖女王として即位した。
ゴーラ
特徴
中原ではパロに次ぐ歴史を持つ帝国。カナン帝国と同時期、あるいはそれ以前に建国されたともいわれ、一時は大帝国としてカナンと覇を競い合ったが、敗れてカナンに併合された。カナン滅亡後に復活し、一時はのちのユラニア、クム、モンゴールからレント海岸のロス、タリアまでにいたる版図を誇った。
帝国時代の首都はアルセイスであり、三大公国時代となって皇帝の居城はアルセイス近郊のバルヴィナへ移転されたが、政治的な権力はユラニアの支配下となったアルセイスにそのままとどまった。皇帝家断絶後、初代ゴーラ王イシュトヴァーンによって旧ユラニアを版図としてゴーラ王国が建国されると、バルヴィナを中心に新首都が建設され、王の名にちなんでイシュタールと改名された。
物語の開幕当時は、象徴化した皇帝を戴いた3つの大公国が、帝国を3分割して支配していた。長い歴史を誇りながら衰退した文化が支配するユラニア、東方からの移民によって建国され中原にあっては人種的にも文化的にも特殊な国であるクム、建国まだ数十年の新興国にして極めて野心的なモンゴールと、それぞれ個性的な、時として相容れぬ要素を持つ三国が並立していただけに、政情は不安定であった。それがひとつの要因となって、後に三大公国制は崩壊、皇帝家は断絶した。その後、滅亡したユラニアを版図として、新たなゴーラ王国が建国された。
本編中の歴史
パロの首都クリスタルへの奇襲(第一次黒竜戦役)を成功させ、一時はパロを占領下においたモンゴールであったが、やがてパロ国内で生じた反乱に敗れて撤退を余儀なくされる。同時期に起こったモンゴール大公ヴラドの病死という不運もあり、各国連合軍との戦いに敗れたモンゴールは一旦滅亡し、クムの占領下に置かれることとなる。
しかし、クムに捕えられていたヴラドの長女アムネリスが、イシュトヴァーンの手を借りて脱出に成功する。モンゴールの残存勢力をまとめたアムネリスは、モンゴールの首都トーラスを陥落させ、アムネリスは新モンゴール大公としてモンゴール大公国の復活を宣言する。
その後、2度に亘るケイロニア―ユラニア戦役を除けば、しばらくは比較的平穏な時期が続く。が、間もなくユラニアの首都アルセイスで行われた、ユラニアの3人の公女とクムの3人の公子との合同結婚式にて、クム大公の長男タルーと、ユラニア大公の次女ネリイの主導するクーデターが勃発し、ネリイを除くユラニア大公家が全員死亡、クム大公家も次男が死亡するという惨劇が起こる。
それをきっかけとして、タルー・ネリイ連合軍とクム軍との戦いが勃発する。事前にタルーと密約を交わしていたイシュトヴァーン率いるモンゴール軍は当初タルー側の同盟軍として参戦し、クム大公タリオ率いる軍に勝利してこれを討ち取る。だが、密かに匿っていたクム大公の三男タリクを人質とした交渉によって、一転して今度はクムと同盟し、タルー・ネリイ連合軍と戦うこととなる。イシュトヴァーンは難なくこれを打ち破り、ネリイは死亡、ユラニアは滅亡した。
ユラニアに残ったイシュトヴァーンは、妻となっていたアムネリスをアルセイスに呼び寄せ、ゴーラの前皇帝サウルの啓示を受けたとして、旧ユラニアを版図とし、モンゴールを属国とする新ゴーラ王国の建国を宣言、自らゴーラ王として即位する。しかしその後、傭兵だった頃のイシュトヴァーンの行為を巡ってモンゴール首脳部とイシュトヴァーンとの間に諍いが起こり、イシュトヴァーンは武力をもってモンゴールを制圧。モンゴールはゴーラ王国の直接支配下に入ることとなった。それに伴い、アムネリスはゴーラの首都イシュタールに監禁され、獄中で男児を産んだ後に自害した。
ユラニア
ゴーラ三大公国のなかで最も歴史が古い、年老いた国家。土地は肥沃で気候も穏やかだが住民は新奇な事に関心がなく無気力で保守的であった。
パンチ ナビスパ キログラム ユーロ 風花 スマート ラビット リュクス リバー ナビピ スタチオ パラダイス 朝の山道 タイム すいば レバー クニカル ハイレ アーマー マレーシア まーこ ビフテキ 生かす マラケ 自然薯 ボック プラチナ ライフプ オマーン ドーハ 道しるべ オーガ うみわに ミーズ あかちゃ トロンボ 逢坂の関 スポッ シティ ミックス ドマーク ジニーメイ スプレッド はっさく フリート フォトン ブレード シアトー タイム ハウス
2000年ほど前に、ゴーラ帝国の実力者として、当時の皇帝を傀儡と化したユラニア大公により、アルセイスを首都として建国された。その後、帝国支配の野望を強めるユラニアに対抗すべく建国された、親皇帝派の大公国クムと対立しつつ、二大公国体制を維持ししていくこととなった。しかし、長い歴史を重ねるうちに、国からは次第に活気が失われ、退廃的な文化が支配的となると同時に、国力が衰退していった。
ユラニア大公家を中心とする退廃ぶりは、〈闇の司祭〉グラチウスの狙うところとなり、グラチウスの影の支配を受けて、第一次ケイロニア―ユラニア戦役をおこすこととなった。アルセイスまで遠征してきたグインによって戦役には敗れたものの、グラチウスの支配からはひとまず解放された。しかし、ケイロニア皇女シルヴィアの誘拐に端を発する第二次ケイロニア―ユラニア戦役に再び敗れたのち、紅玉宮を舞台として起こったクーデター、続くゴーラ内乱を経て、大公家の一族をはじめとする国の重臣はことごとく命を落とし、ユラニアは滅亡した。
その後、その版図は、サウル皇帝の亡霊による啓示を受けたとしてゴーラ王を宣言したイシュトヴァーンによって引き継がれ、新たにゴーラ王国となった。
クム
ゴーラ三大公国のなかでは南に位置し、キタイからの移民によって持ち込まれた東方独特の風俗をいまも伝える、中原にあっては人種的にも文化的にも特殊な国。首都はルーアン。
ゴーラが大帝国だった時代に移住してきたキタイの移民が中心となり、ユラニア大公国の成立から数百年後、帝国支配の野望を強めるユラニアに対抗する形で建国された。土地は肥沃で文化も発展しており、住民は快楽主義で知られ、また商人の国キタイの流れを汲むものとして、抜け目のない商売上手でも知られる。オロイ湖などの湖沼や河川が国土の多くの部分を占めており、運河も整備され水上交通が発達している。国内第二の都市であるタイスは遊郭や賭博、闘技などが盛んであり、「快楽の都」として名高い。
モンゴール
中原で最も歴史が浅いゴーラ三大公国の新興国。首都はトーラスであり、ここに人口のかなりの部分が集中している。
ゴーラ皇帝サウルの騎士長であったヴラド・モンゴールが、その後功績を認められて伯爵から大公となり、数十年に建国した。カナン時代から不毛で知られた、ケス河南西の森林地帯を開拓して国土としているため、土地はお世辞にも肥沃であるとはいえず、文化的にも遅れているとされる。気候も変化が激しく、住むにはなかなか適さない土地ではあるが、その気候が逆に幸いして、中原各地で嗜好品として愛好されるヴァシャ果の名産地となった。
自ら開拓して作り上げた国であることから、国民の愛国心は非常に強く、尚武の気性でも知られ、軍隊も強かった。が、モンゴール軍によるパロへの奇襲をきっかけとした黒竜戦役に最終的に敗れて滅亡し、その後一時は復活したものの、ゴーラ王となったイシュトヴァーンのクーデターによって再び滅亡することとなった。